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 旧HPを記念に残します−3 ラブストーリー   2004.8.29


     ラブストーリー イメージ


       

        /イヤリング/ 

カチカチと小さな音が聞こえた。振り向くと会社帰りの人で溢れる自由が丘のプラットホームだった。小さく肩をすぼめるとまたあの音が聞こえた。そうだ、イヤリングだ。
 
 「素敵! でも嫌いじゃなかったこういうの。アッ、もしかして.ねえ.もしかなの?」
昼休みに仲の良い同僚がイヤリングを指で弾くついでに肩を軽く突ついてきた。
 「ヒ・ミ・ツ」と、ウインクをして良子は笑いながら食堂へ向かった。
 
 何の事はない。由美にもらったのだ。この揺れる耳飾りは彼女の趣味だった。夕べ彼女の部屋でふと手にしながら付けてみたのだ。とうとう由美までもが結婚するらしい。来春だと言う。後ろからフェラガモの香りと共に彼女が近づいてきた。
 「いいじゃない。すてき。あげるわ。」 
と、楽しそうに言った。良子はなぜか急に欲しくなって ありがとうとバックに入れたのだ。気が付くと今日はお気に入りの白のスーツだった。食堂でも席を詰めてくれた男達がいつもよりずっと優しいのに驚いたのだ。

 「いいかも。これ。」 
 思わず出た声に あわてて周囲を見回すと反対側のホームから「緑ヶ丘」の三文字が、いつものように誘いかけてきた。隣の駅には「夢」を売るという相談所があった。そうね、行ってみようかな.. 良子はヒールのかかとを小さく鳴らすとためらいがちに歩き始めた。
 
 階段を登る足音の後から、あのかすかなな音がそっとついて来てくれた。

     
                          

             
           


                           
         /渋滞/
 
 あれは1年前。
 助手席から身を乗りだすと 雲の端が銀色に輝き夕日の中にゆっくりと流れて行くのが見えた。

 「おい、閉めろよ。」

 音もなく上がって行く窓ガラスの向こうでは赤いテールランプの川が山すそへと流れていた。この渋滞を抜けたら彼と別れて独りでやっていこう。小さく息をつくと 理沙は目を閉じた。

 週末の夕暮れは身動きの取れぬ渋滞と決まっていた。ホワイトダイヤモンドのミニクーパーは 白いキャンパスに光り始めたネオンを映しながら もう20分は自由が丘の街に閉じ込められていた。しかしそれさえも楽しかった。あの青いドレスを今買ったのだ。何処へ着て行こうとかと考えるだけでつい口元がほころぶのだった。 

 いつの間にか車は流れ出し 坂をくだると緑ヶ丘だった。赤い信号を見詰めながら理沙は薄い記憶をたぐり寄せていた。確か智子に付いて来た時この駅を降りたはず.. ふと、理沙は行ってみようかなと思った。

 もうじき小さな結婚相談所があるはず。スピードを緩めると あの可愛いブチ猫があの時のままにおじさんに引かれて散歩をしていた。音に振りむいた猫の困ったような目に,理沙は思わず微笑んだ。 


                
                         
                           



                
 /木漏れ日/

 カーテンの木漏れ日の中で僕は夢を見ていたらしい。

 会議室の真っ白な壁に囲まれた中で彼らの背広だけが黒い数珠のように並んで動かなかった。
 「そうか、分かってはもらえなかったか。」
と、心の中で舌打ちしたと同時に部長の声が響き渡った。
 「高橋君の貴重な意見に関しては今後のさらなる分析に期待しようではないか。では次に、佐々木君の提案に移ろう。」
 見詰めていたテーブルの白い反射光がぐいぐいと近づいてきた。眩しい。やけに頭が重い。

 「気にするなって。」
と、肩をたたく同僚の声が 街の雑踏の奥から聞こえてくる。そうか、あれから寺田と渋谷で飲んだんだ。ということは今はなんなんだ。たいして飲んだわけでもないのに昨夜の記憶はおぼろげで、休日の朝のまどろみの中にとけ込んでいた。寝返りを打つと台所のざわめきが聞こえてきた。そういえば母さんの誕生日が近いな。いつだったっけ。ぼくは昨夜に記憶が戻らぬように身体を転がしてベットの端に座り込んだ。

 トントンという音はいつのまにかジャーッという炒め物の音に変わっていた。耳が慣れてきたのかそれに混じって鼻歌らしきものも聞こえてきた。ぼんやりとした頭の中で曲になってきたものは少し前に流行った福山正治の「桜坂」だった。コンサートの帰りには二人でよくハミングしたものだ。 
 そうだ。美佐子だ。
 美佐子がいるんじゃないか。暖かな何かが僕の心を埋め尽くすころには、スリッパを履くのももどかしく階段を駆け下りていた。僕は先月美佐子と結婚したのだ。緑か丘の小さな結婚相談所で知り合ったのだ。
 
 キッチンにはベーコンの香りが漂いエプロン姿の美佐子は忙しそうに動き回っていた。僕は妖精のような彼女の後姿に魅入っていた。妻なんだ。さっきまでのあの気分はどこへ消えたのか僕はただかわいい妻を見詰めるだけだった。
 「あら、びっくりした。どうしたの.. おはよう。 大丈夫なの。」
 差し出されたコップの水をありがとうも忘れて僕はただ飲み干した。


 

           







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